「正直言って、人と距離を取ってばかりじゃ仕事になりません」テレワークでも会社のように「密」に働く方法

「密」の回避や「ソーシャルディスタンス」が叫ばれる一方で、「これほど人と『疎』な状態が続いて大丈夫なのか」と感じている人も多いはず。会社の利益を生み出す原動力、たとえば、新しいアイデアを世に問う創造性や、社員の仕事の意欲をかきたてる競争心、取引先との良好な関係などは、人と人が交わる「密」な環境から産まれる側面があるからです。しかし、今はオンラインでも、クラウドサービスなどを利用して、バーチャルに「密」な場を作り出すことが可能です。テレワークを前提に、会社が活力を維持するためにはどのようなツールが必要なのかを考えてみました。

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 テレワークで「やる気」を失う社員 テレワークで「やる気」を失う社員

会社への帰属意識が消えていく・・・

38%の人が「業務量が減った」と回答

最近、テレワークを始めた人も多いでしょう。パソコンやカメラ、マイクの使い方にも慣れて、「会社に行かなくても、意外と仕事は進むのだな」と感じているかもしれません。

しかし、現実はそう甘くはありません。テレワークにより「労働時間が減った」人が36.2%(増えた=9.6%)、「業務量が減った」人が37.6%(増えた=6.8%)にものぼるという調査(パーソル総合研究所 「新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」)があります。

「組織の一体感が低くなった」人が36%

この調査によれば、テレワークで「上司とのやりとりが減った」人が45.2%、「同僚とのやりとりが減った」は50.0%、「組織の一体感が低くなった」は36.4%でした。「仕事への意欲・やる気が減った」という人も32.8%いました。

つまり、テレワークの導入により、社内のコミュニケーションが減り、社員は会社への帰属意識が低下し、仕事をやる気を失いつつある可能性が高いのです。「今は一時的な会社の業績低下も仕方ない」と思っていたら、実は社員の意欲が低下してしまっていて、いつまでたっても業績が回復しない、といった事態も起きかねません。企業活動のエネルギーそのものが削がれていれば、企業の根幹が揺るがされることにもなりかねないのです。

今後、新型コロナへの対応は緩和されたり、厳しくなったりする可能性がありますが、企業としては、どちらに転んでも対応できるようにしておく必要があります。

「密」こそが社員のモチベーションを上げる

「相手の気持ちがわかりにくい」「さぼっていると思われないか」

では、なぜ人はテレワークだとやる気をなくしてしまうのでしょうか。そのヒントとなるのは、同調査でテレワーカーの「不安」として挙げられた内容です。1位は「相手の気持ちが分かりにくい」で37.4%、2位は「仕事をさぼっていると思われないか」。つまり、いずれも他人の気持ちや、それに付随する自分に対する評価に関わることです。

職場にいれば、上司や同僚など誰かが自分の仕事ぶりを見ているし、それに対する評価を肌で感じることができます。しかし、テレワークで、職場で上司や仲間に見守られていたときと同じように、他の社員に対する信頼感や、仕事へのモチベーション、職場のチームとしての一体感を保って仕事を続けることは、実はとても難しいのです。

「監視は息苦しい」というジレンマ

上司の側も、部下がちゃんと仕事をしているかどうか、不安を感じているようです。ある企業では、全社員にカメラ内蔵のノートパソコンを貸与し、勤務時間中に社員が「在席」しているかどうかを確認するようになりました。しかし、業務についているかどうかを確認するための会議が増え、業務が逆に非効率になったといいます。「常にカメラとマイクをONに」と指示している会社もありますが、「ちょっと息苦しい」と、社員の評判はあまり良くありません。仕事をオンラインで常時監視するのも一つの方法ですが、社員の意欲を逆に削ぐ可能性もあり、また監視する上司の負担も大きいものがあります。

一方で、職場でモチベーションが保たれるのは、多くの社員が、毎日会社という閉鎖された場所に集まり、近い距離で顔をつきあわせ、特に意識しなくても、互いに様子を把握し合っていたからであると考えられます。人と人の信頼感は、相手との距離や共に過ごす時間に比例して増す傾向があり、組織としての一体感は、職場という閉鎖された空間を共有することによって生まれます。

つまり、自粛要請ではNGとされている「三密」(密閉、密集、密接)は、社員のモチベーションを保つためには必要なのです。

テレワークの先輩企業の「方法」

しかし、テレワーク化への流れを止める必要はありません。たとえば、上司や同僚と離れた場所での作業が避けられないIT系業務委託などを行う企業は、離れた場所でも相互の信頼感を保ち、モチベーションを保って働けるようにするため、以前から自社用などのために業務分析用のクラウドサービスなどを開発し、利用して実績を上げてきました。

以下では、これらのいわば、「テレワークの先輩」とも言える会社などが開発し、一般企業にも提供されているサービスについて、クラウド運用が可能なツールを中心に、①「ありがとう」型、②業務分析型、③メンタル気遣い型、④シンプル管理型、という4つのカテゴリに分けてご紹介したいと思います。

個人の組織への貢献度もわかる「ありがとう型」個人の組織への貢献度もわかる「ありがとう型」

「雑談」や「挨拶」代わりになり、社員評価にもつながる

「ありがとう」と言う人の背中を押すツール

会社では、ちょっとした雑談や挨拶が、重要なコミュニケーションになっていますが、テレワークでは、そのような機会がなくなります。そこで、わざわざメールでお礼を伝えるほどではないことでも、気軽に「ありがとう」や「いいね」などの気持ちをオンラインで伝え合えるようにするのが「ありがとう」型のクラウドサービスです。

「ありがとう」は、些細なことのようでいて、雑談や挨拶と同様に、人間関係の円滑化に意外なほど効果があります。どのようにして「ありがとう」などの気持ちを伝えるためのハードルを自然に下げ、伝える人の背中を押してあげられるか、各サービスで工夫が凝らされています。

個人の組織への貢献度を測る

そして「ありがとう」型のクラウドサービスは、人間関係の円滑化に効果があるだけではありません。社員同士が「ありがとう」のやりとりによって互いに「見守り合う」ことで、相互に刺激し、仕事への意欲を高める効果も大きいのです。

また、「ありがとう」のやりとりのデータから、個人の組織への貢献度を測ることもできます。個人の評価は、個人ごとの成果に基づいて行うこともできますが、仕事の結果がチームで得られることが多いのは、テレワークでも変わりません。そして社員の組織への貢献度を測るために可視化された「ありがとう」のやりとりの状況は、上司が部下を評価するうえでも参考になると考えられます。

ブロックチェーンの仕組みを応用
『チームスイート』(TeamSuite)

「隠れたヒーロー社員」を探せ

コミュニケーションのきっかけを意図的に作る

2020年3月1日リリースの『チームスイート』(TeamSuite)は、ブロックチェーンや社内通貨の仕組みを「ありがとう」のやりとりに応用したクラウドサービスです。感謝という社員同士のコミュニケーションのきっかけを「わざわざ作る」ことによって社員同士の人間関係を円滑にするだけでなく、今、社内でどの社員が活動的なのか、誰がチームに貢献しているかまでが、図で一目瞭然となります。

このツールでは、誰かに仕事を手伝ってもらったり、あるいは誰かの発言が良いと思ったりしたら、オンラインで感謝を表す“ステッカー”を送る仕組みになっています。他の人は、その“ステッカー”に「いいね」という共感を示すことができ、また会社は“ステッカー”を集めた人に社内ポイント(食事券などと交換可能)を付与することもできます。

「自分は役に立っているのか?」という不安を解消

社員はこのような仕組みにより、仲間からの感謝や見守りの視線、共感に支えられていることがわかり、チームの一員であるとの実感を得られます。

「普段の職場でも、気持ちはなかなか相手に伝わらないもの。テレワークではなおさら伝わりませんから、伝える仕組みが必要なのです」と語るのは、開発を手掛けたコミュニティオ代表取締役社長嶋田健作氏。「テレワークでは、社員が『自分が本当に会社の役に立っているのか』『チームに貢献しているのか』と不安を抱えることが多いものです。誰かに『ありがとう』と言ってもらうだけで、自分がチームに貢献していることがわかって不安が解消し、やる気も出ます」

社内で「ホットな人」が一目瞭然

どの社員が、誰に対して、どういう理由で“ステッカー”を送ったか、という送受信データはオンラインで集計されます。そして、ランキングや、“ステッカー”の送受信の線をつないだコミュニケーションマップ(画像参照)が作られます。チームのつながりを可視化することで、企業内のキーマンや、“隠れたヒーロー”も発見できるのです。

「『あ、今社内ではこの人が“ホット”なんだ』ということも読み取れるので、経営者の立場で見ていると、興味は尽きません」(嶋田氏)。

感謝のやりとりを示した図の例。社内でのステッカー送付数、いいね数、送付率、利用率が表示され、“ステッカー”や「いいね」などのやりとりがどの社員の間にどの程度あるのかが可視化される。

オンラインで「さっと手を差し伸べられる人」を作る

企業文化の浸透にも役立つ

月末には、ステッカーの送受信の集計や、コメントが付されたレポートが、社員のひとりひとりに渡されます。

「仕事の成果に対する評価だけでなく、こんなに感謝されていた、こんなに貢献できていたということを改めて振り返ることができれば、さらに仕事をがんばろうと思えるからです」(嶋田氏)。

また、このレポートを読んで自分を振り返ることにより、自分が勤務している会社では、どのような行動や発言が求められているのか、ということが確認できるため、自然と企業文化が社員に浸透し、社員も会社になじみやすくなるということです。

「社内問い合わせ窓口」が不要に

嶋田氏によれば、「今後は誰かが仕事で困っているとき、助けられる人がオンラインで助けるような機能も追加していきたい」という。

「たとえば会社支給のPCの使い方がわからないとき、普通は周囲の人や社内の問い合わせ窓口担当者に聞きます。テレワークでは『オンラインの場にいる人』がさっと手を差し伸べるほうが、社員の一体感が強まりますし、会社も、問い合わせ窓口を設ける必要がなくなるのでコストが下がります」。

『チームスイート』は、SlackやMicrosoft Teamsなどの各種アプリケーションとも連携でき、スマートフォン、タブレット、PCなど端末を選ばず利用できるとのこと。運用費用は1ユーザーあたり700円(月額)から(初期費用別)。

社外を含めた「感謝」のやりとり
『アゲル』(Agelu)

「上司は自分を見ていない」社員の不満を解消

シンプルに「ありがとう」のやりとり機能に特化し、社内だけでなく、社外のクライアントを含めた感謝のやりとりの実現を目指しているのが『アゲル』(Agelu)というクラウドサービスです。

もともとは、開発したインターリンク社が自社で使用するために作ったもの。客先常駐などで仕事をする同社のスタッフは、同社と離れた場所で毎日仕事をするので、客先で孤独感を感じたり、あるいは「客先では一生懸命働いているのに、その働きぶりが評価されていない」との不安を感じたりすることが多かったそうです。このクラウドサービスは、そうした不安や不満を解消することを目指したものです。

利用開始後、同社では社員の離職率が低下しただけでなく、客先に常駐する社員のクライアントからの評価が社内の人間にもわかるようになり、社員の評価にも役立ったといいます。

開発部門、バックオフィスにも直接「ありがとう」が伝わる

インターリンクHR Tech事業部出川恵氏によれば、「たとえばアプリの開発案件では、営業担当者やプロジェクト・マネジャーは、クライアントから評価や感謝を直接言ってもらう機会があります。しかし、肝心な開発部門は、クライアントとの接点がなく、『ありがとう』を言われる機会が少ないのです」とのことです。「リアルタイムでクライアントから開発担当者へ『ありがとう』が贈られれば、開発者にとってはモチベーション向上につながります」。

感謝のやりとりの集積はランキングされますが、「スポットライトが当たりやすい営業担当者や開発者だけでなく、業務が円滑に進むよう日々サポートしている総務や営業事務担当者に『ありがとう』が集まるなど、縁の下の力持ちがきちんと評価されるようになった」(出川氏)とのことです。

「ありがとうが言える人」は「人の長所を見つける能力がある人」

また、「ありがとう」を受け取る人だけでなく、「ありがとう」を送る人も評価されます。なぜなら、「『ありがとう』をたくさん発信している人は『人のよいところを上手に見つけられる人』だから」(出川氏)。

感謝のやりとりでメンバー同士の相関図も作成できます。出川氏は、「蓄積したデータを見ることで、その会社が考えている組織のあり方と、実際の組織の状態の乖離が見えてきます」といいます。つまり、A部の下にB課がある場合でも、相関図で「ありがとう」のやりとりを見ると、「B課はA部の下にあるより、C部の下に置いたほうがいい」といったこともわかるそうです。

なお、出川氏によれば、「『ありがとう』と給与を連動させる仕組みを設けている会社のほうが、効果をあげているようです」とのこと。この『アゲル』というサービスは、シンプルな機能であれば、50名まで35000円(月額)で運用できます。

ゲーム感覚でコミュニケーション
『メルシー』(Merucii)

社内SNSは、利用されなければ意味がない

同じく「ありがとう」と「コイン」を社内でやりとりするクラウドサービスで、ゲーム的要素を重視したのが『メルシー』(Merucii)です。名古屋に本拠地を置くアプリケーション開発会社、シースリーインデックス社が2019年11月にリリースしました。

同社ではかつて、世代間ギャップの解消や社内のコミュニケーション活発化を目的に、社内で一般的なSNSツールを導入していましたが、年配の社員や一部の男性社員があまり使わないといった問題、あるいは若手社員が上司にメッセージを送りづらく、せっかく導入しても、社員の利用頻度が下がってくるという課題がありました。

上司に送る文章が長くなるのはなぜか

そこで、自社開発した製品では2つの対策をしました。一つは、メッセージを送るハードル自体を下げることです。

メルシーでは、あえて『ありがとう』を送る際に、メッセージを入れず、単語(ハッシュタグ)を送るだけで、気軽に伝え合えるようにしています。メッセージだと、上司に送る際には、失礼でない長い文章を考えなくてはならないという意識が送り手に働くので、結局使われなくなってしまうからです」と担当者の森博和氏。

「私の今週のヒーローを投稿しよう」

また、朝の業務開始時にログインすると、たとえば「私の今週のヒーローを投稿しよう」など、毎日異なる簡単なミッションが社員に提示され、社員相互のコミュニケーションを促す仕組みもあります。「特にテレワークでは仕事上の必要最低限のやりとりに終始しがちなので、あえて背中を押す形にしています」(森氏)。

あくまでも「楽しく続ける」というコンセプトで、このクラウドサービスでは、やりとりしたコインも報酬とは結び付けないのが前提です。なお前述のツールと同じく、やりとりの集積で社内の相関図を作成する機能もあります。

自然と利用を促す「仕組み」

利用頻度を上げるための2つ目の対策は、社員が自ら参加したくなるような、温かみのあるコンテンツを用意したことです。

「ありがとう」のやりとりや、回数など、メルシー内での活動によって、クラウド上で種が苗になり、木に育ち、次第に森になっていく機能があります。また、どういうハッシュタグで「ありがとう」をやりとりするか、何度やりとりしたかなど、個人の使い方の個性で、木の育ち方や育てられる木の種類が変わるようになっています。社内コインをためて、「レア植物」と交換して育てることもできます。

「ありがとう」のやりとりやメルシー内でのメンバーの活動を重ねると、メルシーの森内で種が育ち、やがて森になる「メルシーの森」。植生は各自の活動次第で変わり、それぞれ個性が出る。珍しい植物の種を社内コインで買うこともできる。

森氏は「社内検証では、“メルシーの森”によってコミュニケーション量が50%増加しました。総務や人事担当者に利用促進の負担をかけなくても利用率が上がり、運用できる仕組みにすることも重視しています」と言います。

なお『メルシー』は、使える機能により、無料プランから、1ユーザー360円(月額)、840円(月額)、管理画面機能のついた要相談のプランもあります。

「業務分析型」PCの前で仕事が進んでいるとは限らない「業務分析型」

「操作ログ」では社員を評価できない

テレワークであっても、社員の仕事中のパソコン操作ログを取ることは難しくありません。パソコンにツールを入れて、リアルタイムで社員のマウスやキーボードのひとつひとつの作業、どのファイルを開いたか、どんな文字を打ち込み、どのURLに飛んだか、ファイルやウェブサイトのどの部分をコピペしたかなどの一挙手一投足を記録することは技術的に可能です。

しかし問題なのは、その膨大なデータを人間が見て評価するには、大変な手間がかかるということです。そのため、ログを解析して、社員の仕事ぶりを評価するデータに変換するツールが必要になります。これによって、上司が社員の仕事ぶりをより正確に評価できるようになれば、社員の「テレワークでは、いくら真面目に仕事をしても評価されないのではないか」という不安も解消されるのです。

社員の仕事状況をビジュアル表示
『ワークスタイルアナライザー』(Work Style Analyzer)

優秀な「出勤困難社員」のために開発

『ワークスタイルアナライザー』(Work Style Analyzer)は、PC上での業務内容をログ化して収集し、分析するツールです。ユーザーがどのような業務を行っているかを上司、同僚、管理者がリアルタイムで把握し、業務分析で作業の効率化を可能にします。

開発したのは、マイクロソフトの「Office365」のアドオンソフトウェアの制作会社として創業したフェアユース社の足立洋介取締役社長。足立氏は2013年頃から、自社でテレワークを機能させるためにはどういうツールが必要なのかを考えていました。

「当時はテレワークという言葉自体が普及していませんでしたが、介護や子育てで出勤できず、自宅勤務しかできない優秀な社員が、自宅だとさぼっていると思われるので在宅勤務しにくいという状況がありました。そうした社員が自宅で働けないのは、企業としても社会的にも明らかな損失だと思っていました」(足立氏)。

個人、チーム、組織単位で業務状況をリアルタイム表示

そこで足立氏は、海外や地方で働く自社のテレワーク社員のためにこのツールを開発しました。マイクロソフトのOutlookと連動し、社員の稼働時間、業務分類、プレゼンス、勤務場所を分析します。また、利用しているソフトウエア・ファイル名、アクセスしたサイト、コピペした動作やURL、パス、業務の開始・終了時刻、PC の起動・終了時刻、稼働状況を自動的に記録します。キーボードの稼働率やマウスの稼働率のログも取ります。そして、それらのデータを一目でわかるように、視覚化して表示(画像参照)します。

社員のログデータを表示する画面。仕事の予定、パソコンの操作状況、具体的にどんな作業をしているか、どんなアプリを使っているか、どのプロジェクトの作業をしているかなどが時系列で可視化できる。 

「テレワークでは、チームワークを維持するためにも、今まさに社員がしている作業に対して、他の社員がリアルタイムで適切なアドバイスをできる環境が必要です」(足立氏)。

そのために上司や同僚は、仕事ぶりが一目でわかる画面で、他の社員の業務内容を把握できるようにする必要があるとのことです。個人だけでなく、チーム、課、部署、組織全体でも業務状況や業務時間を分析し、図で表示することが可能です。

「毎日16時に生産性が落ちていた」

このツールで集めたデータにより、自己分析をすることもできます。足立氏自身が自分の作業を分析してみたところ、「体調がよくても悪くても、必ず16時頃に大幅に作業の生産性が落ちていることがわかった」といいます。それで意図的にその時間帯にミーティングを入れるなどして、脳を活性化させているそうです。「本当ならジムに泳ぎに行きたいところ(笑)。自分ではまったく自覚していませんでした。人によってこの時間帯が集中できる、できないといったリズムがあると思います」(足立氏)。

女性のほうが短時間では生産性が高い

また、このツールであるグループの業務を分析すると、女性のほうが短く区切られた時間では効率的に作業を行うという傾向が出たことがあるそうです(図参照)。たとえばこういった分析も、このツールから得られるデータを使って可能になります。

あるグループにおける男性と女性の業務効率を比較した図。このような分析から、原因を分析し、業務効率向上のための施策を打つことができるようになる。

なお『ワークスタイルアナライザー』は、社員数5人のスタートアップから最大4200人の会社まで、業種を問わず、食品、IT、不動産、コスメティクス、建設業などで使われているとのこと。大手では損害保険会社や物流会社が採用していますが、中小企業での利用も多いといいます。

「テレワークが増え、会社にいた時間ではなく、結果に対して給与が支払われるという流れになりつつあります。その結果の裏付けとなるのが、このツールで得られるデータです」(足立氏)。

国内のシェアNo.1
『ミーキャップ』(MeeCap)

繰り返し作業の効率性などを細かく分析

『ミーキャップ』(MeeCap)も、社員のPCのキーボード、マウス操作などのデータを収集し、解析する業務分析ツールです。前述の「ワークスタイルアナライザー」と比べると大企業向けで、大手銀行やシンクタンクでの取り扱い実績があり、「国内プロセスマイニング市場」(ITR調査)で、2018年度実績、2019年度予測の2年連続でシェアNo. 1を誇ります。野村総研、鹿児島銀行などの出資を受けて2015年に設立されたサザンウィッシュ社で開発され、現在はその子会社であるミーキャップ社が運用しています。

このツールでは、PCの操作を記録する際、キー操作だけでなく、コピペやクリックした画面のキャプチャー画像も保存します。繰り返しの作業にどれだけの時間を要しているか、作業の平均時間なども割り出すことができます。

業務分析の画面例。個人や部署ごとの業務実態や、業務システムの利用状況を、グラフなどで可視化して把握できる。

より効率的な手順を「助言」

社員の作業を操作ログから分析し、作業動線をビジュアル化することで、「手戻り」(間違えたために最初から作業をやり直すこと)をしている箇所を発見するなどし、もっとも効率のよいフローを「ハッピーパス」として示すこともできます。また、繰り返し作業などを抽出し、自動化すべき業務プロセスを抽出することもできます。

作業動線ビジュアル化の例。作業データから、作業フローを自動的に描画できる。フローに寄り道が多い場合は、手戻りや無駄な作業が発生している場合がある。同じ作業をするための模範的なフロー、「ハッピーパス」を自動で描くこともできる。

「マウスを使う比率が高い社員」は要注意

それらのデータから、能力が高い社員の業務の流れがどのようになっているかも分析できるので、効率的な作業履歴や、センスのあるプレゼン資料の作成工程などをお手本のように再現できます。そして他の社員はそれを見て効率的な作業を学び、自分の作業スピードを上げることができます。

ごく単純な例を挙げれば「ショートカットを多く使う人は効率よく作業ができていることが多いですが、マウス比率が高い人は効率が悪くなる傾向にあります」(同社代表取締役社長山田輝明氏)。

社内の「無駄なシステム」を洗い出し

そして『ミーキャップ』の特徴として、現在、社内で使用されているシステムの問題点は非効率な部分を抽出し、改善策を提示できるという点があります。現在社内システムで利用されていない機能を抽出し、システム機能の統廃合を提案するなど、システム自体の課題を可視化して、分析することができるのです。

「もちろん誰がどのような作業をしているのかを可視化する、テレワークのための支援ツールとしても使えますが、もし『監視』という目的だけのためにこれを導入するなら、割高に感じられるでしょう。『ミーキャップ』が威力を発揮するのは、企業の中のさまざまな共通の無駄を省くなど、生産性を上げるためのプラットフォームとして利用してこそだと考えています」(山田氏)。

「エクセル職人」が陥るリスクとは

業務のPC依存が高まるテレワークにおいては、『ミーキャップ』の分析は効果があります。テレワークでは「Slackなどのコミュニケーションソフトのテキストの量と、それらを使う時間、ならびにエクセルの作業時間が突出して多い」(山田氏)という傾向が見られるといいます。

特にエクセル作業は、テレワークでなくても、各自が「エクセル職人」的な自分なりのやり方を持ってしまい、作業が属人化して、非効率になるリスクが高い作業。PC作業がタコツボ化しやすいテレワークでは、そのリスクは更に高くなります。これを分析せずに放置すると、社員個人はテレワークで一生懸命働いているつもりでも、組織として生産性が高まらないということにもなりかねないのです。

「日本企業の課題である生産性向上は、マネジメントだけでなく、システム環境面からも改革が必要です。そのためのツールとして使っていただきたい」(山田氏)。

新型コロナの影響で自粛要請が始まってから、問い合わせは約10倍に増えているとのことです。現在は70社に導入されていて、9割以上が大企業。中小企業では製造業で採用されています。これまでは、オンプレミス(自社にあるサーバー)でも導入可能でしたが、現在はよりスピーディーに導入するために、指定サーバーか、グーグルやアマゾンなど、指定の既存のクラウドでの提供に限っています。なお、価格は要相談とのことです。

欧米で定評あるツールを組み合わせ
『ハートコア・タスクマイニング』(HeartCore TaskMining)

日本の社員はPC内で独自作業をする比率が高い

『ハートコア・タスクマイニング』(HeartCore TaskMining)も、業務を分析し自動化するためのツールとして開発したもので、テレワークしている社員がどのような業務を行っているかという勤務実態や、生産性・業務遂行能力の把握にも使うことができます。

そもそも、ハートコア社が業務分析に注目したのは、業務自動化の依頼を受けて、クライアント企業の業務分析をしたのがきっかけです。業務分析を通じてわかったのは、日本企業では欧米企業と比べて、社員が自分のPC内で独自の作業を行う比率が高いため、「結局各社員のPCの中身まで見なければ、本当の業務分析をしたことにならない」(ハートコア代表取締役社長の神野純孝氏)ということ。

業務分析ツールを管理にも応用

そこで試行錯誤を重ね、各自のパソコンの作業を記録分析するため、自社の技術と、欧米で定評のあるPCログ解析ツール「Controlio」を組み合わせた、『ハートコア・タスクマイニング』を2019年12月に発売しました。業務分析用のツールとして販売していましたが、テレワークが広がってからは、テレワークのための業務管理ツール、残業時間の管理用としても問い合わせが多くなったといいます。

『ハートコア・タスクマイニング』はやはり、欧米企業で実績のある業務分析ツール「myInvenio」をオプションとして併用することで、さらに深い業務分析が可能になるとのことです。

モニタリングする項目や時間を細かく設定

この製品では、キーストローク、マウスなど、パソコンのすべての動作、作業をモニタリングして記録、分析します。細かい作業すべてのキャプチャー画面がスナップショットとして記録されます。その記録は集計されて分析され、生産性や、各自の業務時間、どんなソフトをどれだけ使ったか、どの業務がどのくらい進んでいるかなど、ダッシュボードで一覧できます。

すべてのログデータはデフォルトで、6ヶ月間保存されます。モニタリングを行う時間と曜日を決め、モニタリング項目も、何を対象にするかは企業次第です。たとえば、ハートコアは自社ではメールのモニタリングはしていません。

管理者画面の例。アプリケーション、ウェブ閲覧、メールなど、どのアクションをモニターするか、モニターする時間は何時から何時までなどを入力する 

業務分析画面の例。仕事内容の分析、アクティブ時間、生産性、アプリケーションやウェブの使用率がどのくらいか、などが可視化される。

データとビデオで「非効率」の原因を探す

業務内容は、個人のレベルだけでなく、部署ごと、組織全体としても分析することが可能です。たとえばある部署で、あるアプリケーションの使用率が高いことがわかった場合、作業ログからその原因を探し、原因となっている作業が行われた時のビデオを再生することにより、自動化、効率化をすることが可能になります。

ある部署の作業で、あるアプリケーションの使用率(緑の棒グラフ)が突出し、使用率が高いことを示す画面の例。

あるアプリケーションの使用率が高い理由を分析するための作業ログを見る画面。そのアプリケーションでコピー&ペーストが大量発生していることがわかる。左端のビデオのアイコンをクリックすると、そのときの作業映像が再生されるので、作業フローを確認することができ、自動化、効率化のヒントになる。

「ネットサーフィンは一日30分まで」

このツールは、不正、データ改竄や情報漏えいの防止にも有効です。たとえば、USBメモリはしばしば情報漏えいの原因となりますが、社員がUSBメモリをパソコンに挿して保存した場合、どのファイルが保存されたかがスナップショットとして撮影・保存されています。印刷がされた場合は、何が印刷されたかもわかります。また、特定の作業名のハッシュタグを検索すれば、その作業で使ったファイルや参照したメールやURLなども探し出せます。

「禁止ルールの設定」というのもテレワークの管理者は重宝するかもしれません。たとえば、「仕事に関するものでも、ネットサーフィンは一日30分まで」などと設定すると、30分を超えると、アラートが出ます。あるいは、「Facebookばかり見ていないで仕事してください」といったアラートを自動で出すことも可能です。社員同士のつながりを図で可視化することもできます。

こうした基本的な機能は1台2500円(月額)、1万台以上なら1台500円(月額)です。

「50円の鉛筆購入が役員決済」

そして別料金になりますが、最適化された業務フローを提示する機能もあります。自動的に作業の「ボトルネック」を特定し、「非効率なのは人が原因なのか、機器が原因なのかまで見極めることができます」(神野氏)。

たとえば、一本化できる似た作業が、別の部署で並行して行われていたことが発見されることがあります。「50円の鉛筆を買う経費処理が役員決済だった」という無駄が見つかる会社もあるそうです。このほか、会社の基幹システムと周辺アプリケーションの連携の効率性向上や、使われていないシステムの洗い出しもできます。

猛然と働き出した「課長」

以上のように、本格的な業務改革にまで踏み込めるツールですが、テレワークでまず業務を管理したい場合は、とりあえずダッシュボードの機能で、各パソコンの業務状況を見ておくだけでも十分業務管理の効率が上がると神野氏は言います。

「プラセボではありませんが、まだ稼働していないのに、業務分析ツールが入るとわかった瞬間、それまであまり仕事をしていなかった課長が猛然と働き出し、生産性が一気に上がった企業もあります」(神野社長)。

ハートコア・タスクマイニングは、社員数10人から1万人規模まで、さまざまな企業30社で導入されています。業種もメーカーから物流、士業の事務所まで多岐にわたります。

「メンタル気遣い型」「健康」が会話のきっかけ「メンタル気遣い型」

会社の「気遣い」が、社員の帰属意識と意欲を高める

テレワークでは、社員同士の直接の接触が減ることから、社員が精神的な不調に陥りやすく、また周囲がそれに気づきにくいことが課題です。メンタル面の問題を予防・回避し、発見するために、メンタルケアをするクラウドサービスがあります。

しかし、実はメンタルケアの目的はメンタルケアだけではありません。会社が社員に対して、「メンタルケアをしていますよ」「社員に気を配っていますよ」という「気遣い」を示すこと自体により、テレワークでは乏しくなりがちな社員の会社への帰属意識が高まり、社員の仕事への意欲が高まるという効果があるからです。次に紹介するのは、生産性の向上や、社員離職の回避にもつながる、メンタルケアのアプローチです。

社員の本音をあぶり出す「質問」
『ラフールサーベイ』(lafool survey)

3000社18万人のデータを基に社員の心身の健康状態を解析

ラフール社が開発した『ラフールサーベイ』(lafool survey)は、年に1〜2回の141の質問と、毎月19の質問を社員のスマートフォンのアプリに配信し、心身の健康状態、社内外のパワハラなどのハラスメントリスク、離職リスク、エンゲージメントの度合いなどを可視化する分析ツールです。法律上の「ストレスチェック」も兼ねるものです。

約3000社の社員18万人以上のメンタルヘルスデータをベースに、専門家の知見を取り入れたオリジナルの質問項目で、個人および組織レベルでメンタル面のリスクを測定します。同業他社とも時系列比較できます。

法定の「ストレスチェック」で社員の気持ちはわからない

現在、一部の企業に法律で義務化されているストレスチェックには『あなたはストレスを感じていますか』といった、ストレートすぎる質問が多く、その結果により、個人のメンタルコンディッションを測定するのは困難だとの批判もあります。しかし、

「長年の、メンタルヘルス、離職率防止のための領域での蓄積があり、膨大なデータを元に、表面的でない社員の本音の部分まであぶりだす質問構成、回答分析技術には一日の長があると自負しています」(執行役員社長室長大塚友広氏)。

社員のメンタル状態を個人、部署レベルで一覧把握

管理職は社員のコンディッションを一覧できる画面で、社員のメンタル状態を示す数値や比較グラフをチェックできます。良い点、悪い点を自動的に抽出して、管理者にフィードバックする機能もあります。部署別、性別、職種別、社内とテレワークの別などの細分化した診断結果も見られます。

個人、部署、組織全体のメンタルコンディッションの評価のサマリーページ。他社比較、時系列比較で指数を計算する。心と身体の健康、仕事への取り組み方(エンゲージメント)、仕事内容、人間関係、組織との関係などのほか、ストレスや離職、ハラスメントリスクも可視化される。

2019年4月に提供を開始し、現在550社以上(4月末時点)で採用されています。求人情報サービスのエン・ジャパンや、赤字続きの会社を18年連続増収企業に再生させた「中小企業経営者の星」小山昇社長で有名な武蔵野も、同製品をいち早く導入した企業のひとつです。

シンプルな質問だけで、離職予防に効果
『ジンジャー・ワークバイタル』(jinjer work vital)

「仕事は楽しいですか」

より簡単な質問で、多数の社員のメンタル状態をリアルタイムで把握しようとするのが、人事向けクラウドサービス「ジンジャー(jinjer)」を展開するネオキャリア社が2018年11月から提供する『ジンジャー・ワークバイタル』(jinjer work vital)です。

このクラウドサービスでは、社員に毎週1分以内で答えられる程度の簡単なアンケートを配信。自分のコンディションを5種類の天気マークで自己申告してもらい、同時に「仕事は楽しいか、上司とはうまくいっているか、よく眠れているか」という3つの質問に回答してもらうようになっています。企業独自の質問を設定することもできます。自動で定期的に配信されるため、人事担当者に負荷がないことや、ログインなしで、スマートフォンなどを使って1分以内で回答できるため、回答率が95%と高いことなどが特長です。

回答結果を組織全体で集計しグラフ化した画面例。1分以内で答えられる簡単な質問であるため、回答率が高い。

上司には回答内容を知らせないのが前提

前出の『ラフールサーベイ』に比べると、社員の正直な気持ちの申告が前提となっています。そのかわり、社員の回答内容は上司には見えないようになっており、中立的な立場の人事担当者などに送付されます。

回答結果は蓄積・分析され、属性ごとの推移や回答率などを人事担当者が確認します。部署ごと、個人ごとに、定点観測に基づいたアラート機能があり、人事担当者は社員の離職の予兆などのコンディション変化を、いち早く察知することができます。

社員との面談負担を大幅に軽減

同社では、年300人から400人の新卒社員を採用しています。

「人材開発部門での新卒採用者や中途採用者に対する個別面談に、あまりにも負荷、コストがかかりすぎていました。必要な面談に、より時間を割けるよう、自社用に開発して導入しました」と経営企画本部プロダクトデザイン部部長松葉治朗氏は話します。

その結果、社員との面談数をそれまでの約50分の1に抑えながら、離職率の6%低下を実現できたといいます。

「たとえば、大手の保険会社では、とくに将来有望なハイパフォーマーの離職可能性を予見できる点が重宝されています。新型コロナの影響で、入社していきなりテレワークになってしまった新入社員の、離職防止用に使われることも多いです」(松葉氏)。

『ジンジャー』シリーズと組み合わせて導入

『ジンジャー・ワーク・バイタル』は、人事管理や勤怠管理などの『ジンジャー』シリーズの他のプロダクトとの組み合わせでなければ導入できませんが、勤怠、人事、労務、経費、給与などの管理プロダクトと同じプラットフォーム上でデータをかけ合わせ、情報を一元管理することができます。もっとも安価なプランとしては、勤怠管理との組み合わせで、1ユーザー600円(月額)となっています。

プロジェクトや時間を把握する「シンプル管理型」プロジェクトや時間を把握する「シンプル管理型」

他の社員の「顔」と「仕事」が見える
『レモネード』(remonade)

「日報」では社員の過去しかわからない

『レモネード』(remonade)は、ブラウザ上のバーチャルワークスペースで、他の社員が、いまどんな仕事をしているのかということと、その進捗度を、リアルタイムでグラフ化するシンプルなツールです。

他の社員のしごとの進捗を示す画面例。写真のまわりのリングで進捗度がわかる。右上が自分で入力した自分のタスク。チェックをつけると、他の社員にも仕事の進捗が表示される。

開発、販売を手掛けるキュー社は、ソフトウェアの開発等に取り組むスタートアップ。創業時、学業と両立していたエンジニアも多かったため、リモートワークを含めた多様な働き方を模索し、既存のさまざまなリモートワークツールを試してきました。しかし、「その多くは日報ツールで、事後的に報告をさせるもの。今、誰がどういう働き方をし、どのプロジェクトに取り組んでいるかということが、リアルタイムではわかりづらかったのです」と同社の坂田駿介氏は言います。

そこで「誰でも自宅環境で使えて、作業の分析ができ、シンプルでわかりやすく、遊び心もあるツール」として生まれたアプリケーションがレモネードの前身となりました。

「忙しくて死にそう」と言い合える

メンバーは仕事はじめにウェブ上の仮想ワークスペースにログインし、その日の自分のタスクを「メールチェックと返信」「プロジェクトXの企画書の準備」「Y社とのミーティング準備」「Y社とミーティング」といったように、分けて入力します。

坂田氏は「レモネードではあくまでタスクや進捗報告は自己申告です。これは『監視』するのではなく、チームメンバーを信頼することが会社としてのあるべき姿という信念から」と話します。

そして、自分のスケジュールを入力するときに、自分の感情のコンディションを、以下の5種類の表情マークで入力する仕様になっているのがポイントです。泣き顔(cry)/死にそう(dead)/怒り(angry)/ 普通(neutral)/上機嫌(happy)/やる気満々(excited)。それを共有することで、メンバーの仕事の内容だけでなく、感情が感じられ、同じ職場空間で一緒に仕事をしていなくても、感情的な距離を縮めることができるのです。

否定的な感情も表現できるようになっているのは「むしろ、忙しくて死にそう、といったことを素直に言い合えることが大事だから」(坂田氏)とのことです。

スナップショットを撮影して表示

ワークスペースの右側には「つぶやき」欄もあります。社内での、ちょっとした息抜きの雑談や、廊下ですれ違った人との会話をイメージしたものです。感情や雑談などのコミュニケーションを重視しています。

一つのタスクが終わり、社員が完了のチェックを入れると、その社員が今日のタスクのうちどの程度を完了したかが、アイコンの周りのリング状のグラフで可視化されます。

なお、一定時間ごとに社員のスナップショットを撮影して、それをメンバーのアイコンとして表示する機能がありまが、「女性スタッフが顔を撮影されることを気にしたり、家の様子を見られたくないという声もあり、アイコンにはスナップショットではなく既存の画像やイラストも使えるように設定し直しました」(坂田氏)とのこと。

社員ごと、部署ごとに達成率を確認

このほか、タスクにはタグをつけられるので、プロジェクトごと、部署ごと、週ごと、月ごとといった様々な切り口で進捗状況の集計ができます。マネジャーやメンバーはこの画面で、プロジェクト全体の進捗を管理したり、メンバーのタスク時間、メンバーの達成率などを確認することができます。

料金はもっともシンプルな機能のみの場合、1か月当たり1人300円から。基本的な機能を5人までなら無料で使えるプランもあります。2020年1月のリリースから、現在は1500ユーザーを突破しています。

皆がどこで、何をしているのかがわかる
『ソラポータルサービス』(Sola Portal Service)

部下が「いまどこにいるか」を確認できる

最後に、ユニークな機能を搭載したツールを紹介しましょう。テレワークで「お互いが今どこで、何をしているかわからない」という不安を解消するツールとして、システムやアプリの受託開発を手掛けるSola社の勤怠管理システム『Sola ポータルサービス』に、「起床管理」という機能があります。これは指定した時間になると社員にメールが送られ、社員がそのURLをクリックするかどうかで、社員の状態と場所を確認する機能です。

GPS機能を使って、出退勤の打刻時に社員の場所を把握する勤怠管理クラウドシステムは他にも多くありますが、この製品の特徴は、社員の現在の状態や居所の確認を、管理者側からのメールでの問いかけにより行い、社員に反応するよう求める点にあります。

「起床管理」を様々な行動管理に応用できる

同社ではもともと、遅刻が許されない職種で、社員の起床を確認したいなどの用途を想定してこのツールを開発しましたが、それ以外にも幅広い使い方があるといいます。

「バス会社や派遣会社、空港業務などで、早朝にクライアントの指定した場所に集合しなければならないときなど、自社の社員が指定場所に指定時刻にいるかどうかを確認するという用途に使われています」と『Solaポータルサービス』担当の加藤千夏氏。

加藤氏によれば、この機能は使い方次第で、「外回りの多い担当者の行動管理など、社員のさまざまな行動管理に用いることができる」とのことです。

起床管理画面の例。管理者が設定した起床時間にメールを送信。社員は受信したメールに記載のあるURLをクリックすることで、起床の確認ができる。GPSを利用して、指定場所に指定時刻にいるかどうかの確認にも使える。勤怠管理や日報などとも連動できる。

テレワークは「出退勤管理」だけでは不十分

「Solaポータル」自体も自社のニーズから生まれました。システム構築やソフトウェア開発で客先に常駐するエンジニアや、社内にいる時間が少ないメンバーが多く、お互いに何をしているのかがわかりにくかったり、社員の勤怠管理がしづらいという状況でした。

「既存の勤怠管理システムは出退勤管理に特化したものが多く、ニーズに合いませんでした。出退勤情報、日報を結びつけて一元管理し、みんなでお互いの情報を共有することで、ほかの社員がなにをしているのかがわかるものが必要でした。また、ウェブで動くシンプルなアプリケーションで、安価に運用できることも必要条件でした」(加藤氏)。

現在導入企業はシステム運用・保守サービス会社が約4割、飲食関連企業が約3割、次いで人材派遣企業などで多く使われています。

基本となる出退勤管理・日報管理は1ユーザー300円(月額)、起床管理は1ユーザー100円(月額)。出退勤管理と起床管理は単体でも、合わせてでも利用することができます。「起床管理」というユニークな機能はシンプルですが、企業の工夫次第で、幅広いニーズをカバーできるかもしれません。

テレワークの成否は、採用するクラウドサービスが左右する

以上のように、テレワークでも人が密接にコミュニケーションを取りながら働くためのクラウドツールを見てきました。社員が離れた場所にいても、会社として一体感を保ち、社員の働きを適切に評価できるよう、様々な工夫がなされていることがわかります。テレワークで社員を管理するには「監視」が必要であるとの意識も起きがちです。しかし、より効果的で手間のかからない方法とは、結局のところ、目標達成に向けて同僚や上司とのコミュニケーションを取り、仲間と助け合い、評価し合っているという一体感、そして常に誰かに気遣われ見守られているという安心感なのです。

会社員として働くことが、必ずしもオフィスで働くことを意味しなくなる世の中が訪れようとしています。今後は、社員が会社から離れて仕事をする状況でも、この記事で紹介したクラウドサービスなどを利用することによって、社員がバーチャルに「密」な状態で快適に働ける「場」を提供できるかどうかが、会社の浮沈を左右することになるのかもしれません。

取材・文=奥田由意 編集=eon-net編集室