

slack、チャットワーク……あなたの会社に合うのはどれか?「5大ビジネスチャットツール」徹底比較
ビジネスチャットを導入する会社が増えている。働き方改革で勤務時間や働く場所に柔軟性を持たせるならば、チームとしてのコミュニケーションはより密で効率的でなければならないからだ。そこで本記事では、すぐにも導入できるおすすめのビジネスチャットと使い方のコツを紹介する。
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ビジネスチャットとは何か

個人向けチャットを機能強化したもの
プライベートで、LINEやFacebook Messengerなど、個人向けチャットツールを使っている人も多いだろう。ビジネスチャットは、この個人向けチャットに、メッセージの検索・タグ付けやスレッド表示、クラウドを介したファイル保存・共有などの機能を加えて、ビジネス利用向けに強化したものだ。日本企業での導入率は3割を超えたと言われている。
個人向けチャットと比べると、セキュリティー面の強化もなされていて、会社の組織単位でのメンバー管理や、人事異動等への対応も容易になっている。
コミュニケーションに「抜け」がなくなる
これまでの働き方の常識では、皆が同じ時間に同じ空間で仕事をしていたので、職場にいれば、意識しなくてもある程度の情報を共有し、用件を伝え合うことができた。ところが、出勤時間が人によってまちまちになったり、テレワークが導入されたりすると、コミュニケーションに抜けや漏れが生じやすくなる。
ビジネスチャットを利用すれば、やりとりが記録に残るので、「聞いていない・見ていない・忘れていた」が起きにくく、上手く活用すれば、これまで以上に効率的・生産的なコミュニケーションが可能になる。
多くの会社がサービスを提供しているが、多くのビジネスチャットが共通して備えている基本機能は以下の通り。
- 登録した相手との1対1のテキストチャット
- 登録した複数の人たちとのグループチャット
- チャットで交わされた内容のタグ付け、検索
- 音声通話/ビデオ通話
- ファイルの保存・共有
- PC/スマホ/タブレットでの利用
シェアが大きく、使い勝手に定評があるのは以下の5社だ。それぞれ、チャットの仕事のなかでの位置づけ、企業文化などの要素でポジショニングすると、おおよそ下図のようになる。各サービスの詳細については、次項目で紹介したい。
5大ビジネスチャット・ポジショニングマップ


5大おすすめのビジネスチャット

チャットやSNSに慣れている人向け
① slack(スラック)
世界シェアナンバーワン
世界的なシェアの高さと拡張性の大きさが特徴。個人/組織/プロジェクト/顧客別などで自由に「チャンネル」を設定し、メンバーがその中で会話を進めていく。話題を整理しやすく、やり取りの検索や管理が簡単で、絵文字でリアクションができる点なども便利。必要な資料はドラッグ&ドロップで簡単にアップロードして共有。メール、ツイッター、Google、Skypeなど多くのSNSサービスとシステム連携する。
拡張性の高さは「便利」か「負担」か
様々な機能をフルに活用して、カスタマイズすることでどんどん使いやすくしていけるが、逆に細かい設定ができない/面倒だという人には、使いこなすのが負担になるかもしれない。また値段はやや高めで、標準的な有料プランは他社では1人あたり月額500円程度で使えるが、slackは月額850円。
【料金】無料版は検索可能なメッセージ数が直近1万件まで、音声・ビデオ通話は1対1に限定、ファイル保存容量が合計5GBまでなどの制限がある。有料版は中小企業向けの「スタンダード」が月額850円(1人あたり/年払いの場合、以下同)、大企業や高度な管理ツールが必要な企業向けの「プラス」が月額1600円など。
手頃な価格の国産ツール
②Chatwork(チャットワーク)
社外の人との営業ツールとしても使える
日本発のビジネスチャット。社外の人ともやり取りしやすいのが最大の特徴。IDを知っている人なら、社内外を問わずすぐにやり取りができるので、営業ツールとしても活用しやすい。また、グループ内で交わされた会話から、必要な用件を「タスク」として登録・管理できるのも便利。そのタスクを、期限を指定して誰かに割り振ることできる。国産ベンダーならではの使い勝手の良さがあり、Slackと比べて価格も手頃。
複数アカウントは作りにくい
一方でスタンプの数が少ないことや、検索機能の弱さ、グループチャットと個人チャットが見分けづらい、単一のメールアドレスでは複数アカウントを持てない(複数社とのやりとりがしづらい)、といった弱点も指摘されている。
【料金】無料版はグループチャットが累計14グループまで、ビデオ通話/音声通話が1対1のみ、ストレージ5GBまで、広告が表示されるなどの制限がある。有料版は個人向けの「パーソナル」が月額400円(1人あたり/年払いの場合、以下同)、組織向けの「ビジネス」が月額500円、管理機能を強化した「エンタープライズ」が月額800円。
「既読」機能が最大の特徴
③LINE WORKS(ラインワークス)
ITに強くない人も使いやすい
個人向けチャットのLINEで、多くの人が使い慣れているのが強み。既読・未読が確認できたり、スタンプが使えたりする点はLINEと同じ。また外部トーク連携で、他社のLINE WORKSアカウントや一般のLINEアカウントともやり取りが可能。
タスク管理ができるカレンダー、掲示板、アドレス帳、アンケートなどの機能も含まれている。LINEは個人向けチャットツールとして広く普及しているため、ITに強くない人にも使ってもらいやすいという利点がある。
良くも悪くも「既読機能」
一方でLINE WORKSは、ビジネスチャットツールのなかでは唯一「既読」表示機能がある。個人向けのLINEでもそうだが、既読機能は「相手のメッセージに何か反応しなければならない」という圧力が働く。結果として沢山のメッセージやスタンプが送られることになるが、これを密なコミュニケーションと考えるか、不要な時間と考えるかが、LINE WORKS採用の分かれ目になるだろう。企業文化によっては、ややカジュアルに過ぎると判断される場合も。
【料金】無料版ではトーク(無料通話、ビデオ通話、ノート、予定、フォルダ機能)、アドレス帳、ホーム(基本機能)、管理者向けの機能(簡易版)が利用できる。ただし音声/ビデオ通話やLINEユーザーとの対話は1対1のみ。広告が表示され、SLA(サービス品質保証)対象外などの制限がある。有料版は管理面が充実した「ライト」が月額300円(1人あたり/年払いの場合、以下同)、メールやタスク管理機能も使える「ベーシック」が月額500円、ストレージの容量がより大きい「プレミアム」が月額1000円。
Office365利用なら一択
④Microsoft Teams(マイクロソフトチームズ)
WordやExcelの共同編集が容易に
マイクロソフトのグループウェア「Office365」に組み込まれているサービスで、「Office365」との連携が最大の特徴。。Word/Excel/PowerPointなどのハブとして使え、Teamsのアプリ上でこれらツールを起動して作業、メンバーとの共同編集も簡単にできる。Office製品は世界的なシェアがあり、多言語(40言語)に対応している。
操作には慣れが必要
現在は通話・電話会議サービスの「Skype」も機能に含まれているため、海外とのやり取りが多い企業では重宝するだろう。ただ、実際に使用している人からは「UI(画面デザインや操作方法)が使いづらい」といった声も少なからず聞かれる。
【料金】無料版はチャットと共同作業、音声/ビデオ通話、Web版のWord/Exel/PowerPointなどが利用できる。有料版は「Office365」の料金プランで「Business Basic」が月額540円(1人あたり/年払いの場合、以下同)、「Business Standard」が月額1360円、「E3」が月額2170円で金額に応じてサービスやセキュリティが充実し、ストレージの容量が大きくなる。
社内組織を超えた人間関係が広がる
⑤Workplace(ワークプレイス)
社内の人間関係が深まる
Facebookのビジネス版で、社員同士のつながりや拡がりを重視したコンセプトが最大の特徴。本家Facebookが個人を軸とした人間関係を広げていくのに対して、Workplaceは企業内の人間関係を深めていく機能がある。
「社内ニュース」で盛り上がる
多くのビジネスチャットでは、グループ/テーマごとに参加者や発言がまとめられていくため、そのグループに参加したり、中を覗いたりしなければ、内容がわからない。しかしWorkplaceは(閲覧制限を設定していなければ)参加していないグループの話題も、一部が自分の「ニュースフィード」流れてくる。そのため部署の垣根を越えて「いいね!」「コメント」「シェア」などの反応がきて、アイデアや議論が発展していく仕組み。
社内の人間関係を広めたり深めていくにはいいが、一方で実際に使っている人からは「雑談やサークルの話ばかりが盛り上がり、良くも悪くもビジネスライクではない」という声も。フラットで自由な気風の会社には向くが、縦割りの企業文化がある会社には不向きかもしれない。
【料金】無料版の「エッセンシャル」は最大50グループまで。チャット、グループビデオ通話、ファイル保管(1人あたり5GBまで)、自動翻訳、ライブ動画ストリーミングなどが利用できる。有料版で最も需要の多い「アドバンス」は1ユーザーあたり月額4ドルで、グループ設定が無制限/ファイル保管が1人あたり1TBまで拡充されるほか、組織図(同僚やチームが検索できる)やアンケート機能、管理者向け機能が使えるようになる。
どのサービスを選べばいいか?
「機能優先」より、「受け入れられやすさ優先」で
ビジネスチャットは会社もしくは部署の全員が揃って利用しなければ意味がない。1人でも使わない人・使えない人がいるとその人はチャット上での議論には加われないし、メールなど別の手段で連絡を取らなければならくなる。全員が同時に情報を共有できるビジネスチャットのメリットがなくなってしまうのだ。そのためサービスの選定にあたっては、機能や料金よりも使いやすさ・受け入れられやすさを優先するのもひとつの方法だ。
最もハードルが低い「LINE WORKS」
その意味でITに疎い人がいても導入しやすいのは「LINE WORKS」だろう。いまやLINEの国内アクティブユーザー数は月間8200万人を超え、プライベートで使っている/使ったことのある人は多いはず。LINE WORKSとLINEは別ものとはいえ画面構成や操作に共通項は多く、導入のハードルは最も低いと思われる。
「Workplace」で社内を「見える化」
Facebookを利用している人が多ければ「Workplace」は違和感なく使えるはずだ。会社がある程度の規模になると、社内の他の部署には顔と名前が一致しない人が出てきたりする。Workplaceは、社員がそうした部署の壁を越えて社内の人脈を広げやすくして、社員間の交流を活発化させるのに役立つ。特に自分が属しているグループ以外の動向見える「ニュースフィード」機能は、会社全体の「見える化」にもつながる。
「Microsoft Teams」は使われているか
会社でOffice365(Business Basic以上)を契約していれば「Microsoft Teams」は、すでに導入されていると言っていい。Office365は非常に多くの機能やサービスを内包しており、すべてを使い切れている会社はあまりない。Teamsは“使ってみれば便利なのに使われていない機能”の1つになっているケースも多いのではないだろうか。
本格的ビジネスチャットならやはり「Slack」
ITリテラシーが高く、これを機にテレワークを積極的に導入・推進していこうという前向きな人が多い職場なら「Slack」がいいだろう。そのような人たちは既にビジネスにクラウドのツール(たとえばDropboxやGoogleカレンダーなど)を活用していると思うが、Slackはシェアが高いお陰で、連携できる外部ツールやアプリケーションが圧倒的に多い。
機能と操作性のバランスが取れた「Chatwork」
使いやすさと機能さらに価格まで含めたバランスの良さを取るなら「Chatwork」がおすすめだ。日本のビジネス事情を考慮されて作られたビジネスチャットだけに、使いやすさには定評があり、外部ツールとの連携も不足はない。また外部のユーザーやグループともつながりやすいので、組織をまたいだプロジェクトや営業ツールとしての活用などにも便利に使える。
以上のような、各ビジネスチャットツールの特徴をまとめると、下の表の通りとなる。
5大ビジネスチャットツールのメリット/ディメリット
メリット | ディメリット | 値段(有料最安) | こんな人に向いている | |
Slack | 拡張性が高い | 多少の慣れが必要 | 850円 | ITに関心が高くSNSを積極的に使いこなしている人 |
Chatwork | 国産ソフト特有の使いやすさ | 一部機能に改善すべき点も | 500円 | 拡張性と価格のバランス重視で、取引先とも使いたい人 |
LINE WORKS | 多くの人が使い慣れたUI | 「既読機能」の是非 | 300円 | ビジネスチャットに敷居の高さを感じる人 |
Microsoft Teams | Office365との連携性 | Microsoft特有のUIの弱さ | 540円 | Office365でWord、Excel、PowerPointを使いこなしている人 |
Workplace | プロジェクトを超えた関係の広げやすさ | 縦割り組織には合わないことも | 4ドル | 社内の人的交流や意見交換を活発にしたい人 |
上記に挙げたビジネスチャットツールでは、いずれも無料プランが設けられている。無料プランは、音声・ビデオ通話は1対1に限定などの機能制限はあるものの、ビジネスチャットの基本的な機能は使える。まずは、自分の会社にあっていそうなビジネスチャットツールのアカウントを作り、社内の一部の部署で使ってみるなどしたうえで、最終的に採用するかどうかを決めるのがいいだろう。
取材・文=渡辺一朗 編集=eon-net編集室