50代の転職の教科書転職して重鎮になれる人、今の会社にしがみついたほうがいい人

丸山貴宏(まるやま たかひろ)

株式会社クライス・アンド・カンパニー代表取締役

1963年生まれ。滋賀大学経済学部卒業後、リクルート入社。7年間人事担当採用責任者として新卒、中途、留学生、外国人など多岐にわたる採用を担当し、同社の急成長を人材採用の側面から支える。退職後、株式会社クライス・アンド・カンパニーを設立。リクルートで実践した「企業力を超える採用」の実現のため1000社を超える顧客にそのノウハウを提供、さまざまな分野の支援を実現。また個人へのキャリアコンサルティングは1万名を超え、「個人の本気に火をつける」面談には定評がある。

役職定年制などで年収が下がるため、転職を考える50代は多い。ただし、50代というだけで、キャリアや実績があっても相手が難色を示すことが多い。どういう人が50代でも転職に成功するのか、1000社を超える企業や1万人以上のキャリアコンサルティングの実績がある丸山貴宏氏にお聞きした。

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「年齢の壁」を破って
部長に転職できる人

「新しい仕事に挑戦したい」と思えるか

「露骨な肩たたき」が始まる

50代になると企業でもそれなりのポジションについている人が多くなりますが、そのままの待遇で定年まで働けるケースは、どんどん少なくなっています。

例えば、大企業の約半数では「役職定年制」が導入されています。大企業で部長になれるのは同期の1割程度といわれますが、かつては1割に残れなくても関連会社などでそれなりのポジションが与えられました。しかし、もうそんな時代ではありません。規定の年齢に達すると管理職を御役御免となり、以降の年収は大きく下がります。露骨な肩たたきに遭う人もいます。

これを節目と捉えて転職を志望する人が多いのです。これまで歩んできたキャリアと実績に自信があるほど、知識と経験を買ってくれるところで活躍したいと思うのは当然です。

「先がないから転職」という人こそ「転職NG」

ですが「このままいても先がないから…」というだけの動機であれば、転職はおすすめしません。たとえ年収が大きく下がっても、慣れた組織で定年まで働き続けるほうが無難です。転職には大変なエネルギーを要しますし、50を過ぎてこれまでのやり方を変えるのは容易ではありません。それに、転職したところで大半のケースで当初の年収は下がるのです。

それでもあえて新しい世界に飛び込みたい、新しい仕事に挑戦したいという強い気持ちがあるのなら、どうぞこの先を読んでください。

中小ベンチャーから「求められる人」とは

知識と経験が求められる場所

現実に大企業で「50代が欲しい」というニーズはありません。どこも50代の人員はだぶついています。欠員が出ても社内で穴埋めができますし、外部に求めるとしても30-40代で探したいと思うでしょう。

可能性があるのは中小企業かベンチャーになりますが、それでも積極的に「50代を採りたい」というところは見当たりません。打診の仕方によって「50代の人でも会ってみよう」というケースがあるだけです。

例えば、社長が30代で社員の大半が20代というスタートアップ企業が、管理職に知識と経験が豊富なベテランを迎え入れたいというニーズがあります。彼らとしては40代でも十分に重鎮のはずですが、50代でも「人によっては」というスタンスです。

「一度お会いしてみましょうか」

あるいは30-40代の部長職を求める中堅企業が、大手出身者の人脈やノウハウに期待して「年上の上司でも構わなければ」と迎え入れるケースもあります。先日も、こんなやり取りの末に50代の転職希望者が面接に漕ぎ着け、見事に採用が決まった例がありました。

「ウチは役員が47-48歳だから、管理職は40歳前後の方がフィット感が高いかな」

「こういう素晴らしい方がいるのですがどうですか? ただし年齢は53歳です」

「53歳か、うーん」

「大丈夫ですよ。御社の社風に合った方です。思考も若々しくフットワークも軽いので、年下の上司でもうまくやっていけると思います」

「それなら一度お会いしてみましょうか」

こういうことができるのが、企業と信頼関係のあるコンサルタントの強みです。ただし、誰にでもこんな売り込みができるわけではありません。本当に「この人なら大丈夫」という確信が持て、かつ「この人にはぜひ新天地で活躍してもらいたい」と思う場合だけです。

人生100年時代の“折返し地点”で
自分の生き方を見つめ直す

「気さく」で「謙虚」な人になる

では、以上のような転職市場を前提にすると、どのように転職活動を進めればいいのでしょうか。

まず、自分自身の「姿勢」について、改めて確認をしてみましょう。この年代で転職に成功する人は、誰に対しても気さくで謙虚、学ぼうという姿勢があります。仕事は要領がよく、レスポンスが速い。周囲にも目が行き届き、他者に対する気遣いを忘れない――そういう人であると判断されれば、年齢の壁などやすやすと飛び越えて転職し、新しい環境に適応できるでしょう。

転職先ではほとんどのケースで年収は下がりますが、いち早く周囲に溶け込んで実力を発揮できる人は、実績をあげてあっという間に転職前の年収を回復しています。これが50代転職者の理想的な成功パターンです。

一方でお会いして「この人はどこにも紹介できないな」という残念な50代も、少なからずいます。典型的なのは、いかにも「管理職でござれ」というタイプです。上から目線のモノ言い、自分の仕事やキャリアに対する過度なプライド、凝り固まった考え方、新しい環境で謙虚に学ぼうという姿勢がない人です。

「経験」を「チューニング」できるか

また「何ができますか」と問われて「部長ができます」というような人は、需要なしです。管理職であっても必ず実務の能力が求められます。その点では特殊技能のあるスペシャリストは売り込みやすい。ゼネラリストでも自分から積極的に動き回り、若手と一緒に現場で汗を流せる人であれば、可能性は広がります。

さまざまな成功例/失敗例を見て感じるのは、50代の転職者に求められるのは「チューニング力」ではないかということです。これまでに築き上げたノウハウや経験はベテランならではの強みですが、そのままでは使えません。新しい職場のスタイルや人間関係に適応させて、初めて武器になるのです。

50代になって自分を変えるのは大変ですが、逆にその年齢になってもなお自分を変えられるエネルギーがある人、まだ成長できる伸びしろがある人が、転職で成功を掴める人です。

転職を通じて新たな自分を発見

退職後は積極的に自分を宣伝

50代の転職は時間がかかります。今後のキャリアを考え「転職も視野に」と決めたら、早めに転職サイトやエージェントに登録して情報収集を始めましょう。すぐに転職先が見つかることはまずありません。むしろ、あまりの求人の少なさに愕然とするかもしれません。

転職先が見つかってから退職できれば理想ですが、退職が先に決まることもあるでしょう。その場合Facebookなどで「転職活動はじめました。チャンスがあればお声がけください」とオープンにするのがよいと思います。

なぜかこっそり職探しをする人が多いのですが、オープンにした方が情報を得やすくなりますし、これまで築いてきた実績や人脈を活かすという意味でもおすすめです。呼びかけた途端に、かつての取引先からお声がかかった例もあります。

自分には何ができるのか/自分は何がやりたいのか。人生100年時代とすると50代は折り返し地点に差し掛かったにすぎません。これからの生き方と考え、自分自身を真剣に見つめなおすことが、本当の転職活動のスタートになります。

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「気さくさ」「謙虚さ」と「自分のチューニング力」で年齢の壁を突破する

 

構成=渡辺一朗 撮影=山本祐之 編集=eon-net編集室