40代の転職の教科書なぜ実績のある人は転職に失敗するか

黒田真行(くろだ まさゆき)

ルーセントドアーズ代表取締役
ミドル世代専門転職コンサルタント

1965年生まれ。関西大学法学部卒業後、リクルート入社。B-ing、とらばーゆ、フロム・エーの関西版編集長を経て、06年から8年間リクナビNEXTの編集長を務める。14年6月、「ミドル世代の適正なマッチング」を目指しルーセントドアーズを設立。35歳以上に特化した転職支援サービス「Career Release40」を運営している。著書に『40歳からの「転職格差」まだ間に合う人、もう手遅れな人』(PHPビジネス新書)、『転職に向いている人 転職してはいけない人』(日本経済新聞出版社)など。

今の業界に将来性が感じられなかったり、収入減のため40 代で転職希望の人は多い。しかし、36歳以降5年ごとに求人が半減するといわれるほど40代の転職は競争倍率が高い。厳しい転職市場を戦い抜く秘訣を40代以降の転職を専門に手掛ける黒田真行氏に指南していただいた。

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将来性のない業界の人が
将来性のない業界へ転職する理由

5歳ごとに求人が半減していく

35歳は「限界」ではないが「断崖」

まず転職市場における年代別需要の全体像をざっくりお伝えすると、最も需要が多いのは、27-32歳の若手リーダークラス。その年齢を超えると漸減傾向が続き、36歳の誕生日を境に突然求人数が半減する状況になります。それ以降も5年毎に求人が半減を繰り返していくという構造になっています。

確かに35歳は転職の「限界」ではなくなってはいますが、巨大な「断崖」としてそびえ立っていることは変わりありません。40歳を迎えると転職で落胆する方が増える、という状況は根強く残っています。

倒産やリストラに遭って職探しをしなければならない必然性がある方は別として、そうでないなら、現職に留まりながら転職活動ができないか、または本当に転職する必要があるのか否かをもう一度精査していただきたいと思います。

「なぜ部長になれないんだ」

会社を辞めて外に出たい、人に理由を尋ねると「自分はこんなに頑張っているのだから、もっと(報酬を)貰っていいはずだ」「なんでここまでやって部長になれないんだ」という、給料や評価に対する不満が根底にある方が非常に多い。

しかし、じつは平均的な年収グラフは、40代前半まで右肩上がりで伸びていくのですが、そこをピークに緩やかに下降を始めます。毎年収入が増えていたのが減り始めることで、40代前半は不満が蓄積しやすい転換点になっています。

実績ある人が陥る「矛盾」とは

仕事に将来性がない

また最近案外多いのが「いまの業界に将来性がない」というものです。「インターネットに需要を食われて先細りだ」「まもなくAIに取って変わられる可能性がある」から、早いうちに動いておこうというわけです。しかし、いざ転職活動を始めると、希望転職先として、「同業界・同職種」を挙げる方が圧倒的に多くなります。理由は、多くの人が「これまでの知識や経験を少しでも活かしたい」、と考えるから。その結果、「この業界に将来はない」と言いながら、同じ業界に残ろうとするという自己矛盾した行動をとる人が、大量に出現することになります。

「これまで長い年月をかけて積み上げてきたスキルを無駄にしたくない」という防衛本能が、優秀な人の判断力を曇らせてしまうのです。

「他業種で活躍する人」は意外に多い

もちろん、「40歳を超えて、今さら畑違いの異業種・異職種で通用するだろうか」という不安を持つのは当然です。しかし、JHR 一般社団法人人材サービス産業協議会が中高年世代を中途採用した企業へのアンケートによると、入社後に活躍した人は「同業種・同職種」「異業種・同職種」「同業種・異職種」「異業種・異職種」で、ほぼイーブンという結果でした。

「専門知識や専門技能にこそ価値がある」と思い込んでいる人は見落としがちですが、たとえば組織で仕事をスムーズにこなすには「課題を明らかにする」「計画を立てる」「実行する」「社外/社内/上司/部下とのコミュニケーション能力」など、業種職種を問わず重要なスキルがあるはずです(ポータブルスキル)。

自分の持っているスキルが転職先でどのように活かせるかは調査と洗い出しが必要ですが、同業種・同職種でなければ通用しないという思い込みは、可能性を狭めることにしかなりません。

キャリアのある人ほど失敗すやすい理由

求人情報に書かれない「ガラスの天井」

「自分のメールは会社に届いているのか?」

「思い込み」ということでいえば、エントリーすれば数日内に色よいレスポンスがあるだろうという誤解も正しておかなければなりません。

現在の求人情報は「〇歳まで」という年齢制限は掲載できないルールになっています。そのため、その他の条件に適合していると、履歴書を送れば面接を受けられると思ってしまう方も多くおられます。面接日が重なると困るので、慎重に応募先を選び、1カ月に1~2社しか応募しない、という方もいます。

ところが、待てど暮らせど返事が来ない。「自分が送ったメールが届いていないのではないか?」という心配をする人もいます。

ライバルが見えない転職市場の落とし穴

現実はどうなっているのでしょうか。同じ求人に応募しているライバルの姿が見えないので、自分は企業と1対1でやり取りしているかのように錯覚しがちです。しかし人気の求人になると、1つの募集枠に数百人の応募が殺到しているということもあります。しかも、経験やスキル、年齢で、自分より魅力度に勝るライバル達が猛烈にアピールしている。その中では、募集要件に適合しているというだけでは面接に呼ばれるはずがない、といった状況も起こり得るわけです。

40代以上の転職活動は、どれだけ自分の可能性を広げて、打席数を確保できるかどうかが重要なポイントです。少しでも魅力を感じる企業があれば、積極的にアタックする。その結果、数十社に1社の割合で面接に呼ばれるかどうか、という勝負だと思ってください。職種や地域によっては、それが100社に1社、200社に1社となることもあります。それが40代の転職市場の現実です。

なぜ前職の実績アピールは効果がないか

過去のキャリア自慢は無意味

もちろん書類審査を通った後には面接を突破しなければなりません。ところがここでも盛大な勘違いをしている人が多く見受けられます。自分はどこぞの有名企業で管理職を〇年務め、こんな事業やあんなプロジェクトを率いて成功に導いた、という過去実績のアピールを繰り広げてしまうのです。

これが採用する側に、どのように映るか想像してみてください。前職でどれだけの仕事をしてきたかという過去の自慢話は、人事が知りたい本題ではありません。過去の話ではなく、将来入社した暁に、自分がこの会社にどれだけのメリットをもたらすのかを、保有しているスキルから立証してアピールすることが最も重要です。

応募先の会社の「計画」を調べ上げる

そのためには自分にどんなスキルがあるのかを棚卸しするのはもちろんのこと、相手先企業の事業内容や、手掛けている計画について詳しく調べあげる必要があります。その上で、自分を採用すれば御社の利益にどれだけの貢献ができるかを、具体的かつ説得力のある内容でアピールしなければなりません。

本当は履歴書・職務経歴書の段階で、そこまでの情報を送れれば良いのですが、書類通過の通知が来てから、会社の詳細を調べ上げるという方法でも問題ありません。面接で話す内容は、相手先企業によってすべて作り直すことをおすすめしています。そこまでやってようやく選考の俎上に載り、採用される可能性が生まれます。それが転職市場の現実であることをぜひご理解いただければと思います。

十分な準備をして、全力で戦う

コネ、ツテ採用が7割、有料紹介が3割

ここまで厳しい状況を覚悟した上で、ようやくスタートラインに立てるのが40代の転職です。正直言って、転職戦線に準備なしで飛び込むのは大きなリスクがあります。いま本当に転職しなければならないのか? 個人事業主として自分の力で稼いでいく選択肢はないのか? 少しでも準備不足と感じられる方には、私は「今、転職活動するのは再考したほうがいい」とアドバイスしています。

それでもなお転職を決意される方は、全力で戦っていただきたいと思います。転職サイトでも、キャリアコンサルタントでも、ハローワークでも、使える情報源は何でも使いましょう。

ちなみに転職市場には約200万人の求職者がいますが、約7割にあたる約140万人が無料の紹介ルートで決まっています[内訳:ハローワーク80万人/リファラル60万人)。有料の紹介ルートで決まるのは約60万人です[転職サイト40万人/人材紹介20万人]。

可能性を最大化するにはどのチャンネルも活用すべきですが、多くの人が採用に結び付く可能性の高いリファラル(知り合いのコネ、ツテ)を後回しにしがちです。知り合いや友人に相談することは恥ずかしいかもしれませんが、いまは恥ずかしがっている場合ではありません。過去の名刺をたくさん引っ張りだして、頼れそうな人/相談できる人に当たってみることも絶対に欠かせないプロセスです。

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過去の経歴自慢にならないよう留意しつつ、貢献度をアピール。コネ、ツテも含めて準備することが必要。

 

構成=渡辺一朗 撮影=山本祐之 編集=eon-net編集室