20代転職の教科書「転職しないのもいい転職」

増渕知行(ますぶち ともゆき)

ジャンプ株式会社代表取締役

1974年生まれ、栃木県出身。日本大学文理学部卒業後、リクルートグループの採用支援会社に入社。12年間で延べ400社以上のクライアントに対し、採用・中途採用の広告プランニング、コンセプトメイク、ディレクションから採用プロジェクト全体のマネジメントまで幅広く支援。「採用は組織変革の“手段”である」という信念のもと、人材育成や組織マネジメントまで踏み込んだ企業支援を続け、08年ジャンプ株式会社を設立し代表取締役に就任。

一口に「転職」といっても、その環境は転職する人の年齢により大きく異なる。それは会社が転職者に求めるものが、転職者の年齢によって大きく異なるからだ。そこでまず20代の転職事情について、企業の採用支援活動に詳しい増渕知行氏に教えていただいた。

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転職回数が多いと後々のキャリアにも悪影響
今の職場に残るのが「いい転職の近道」かも!?

転職経験が複数回あると「不安視」される

25歳前なら、まだ即戦力とは見られない

ひと口に20代の転職と言っても、25歳より前か後かで事情はかなり異なります。

大卒で25歳といえば就職してまだ3年以内、いわゆる「第二新卒」と呼ばれる層です。実績と呼べる実績もなく、企業側からは即戦力とは見られません。若手が退職して欠員が出たとか、業績低迷や経済状況等で新卒採用を控えたところを補充したいといった採用が主になります。

第二新卒には「入社したが想像と違っていた」とか「職場に馴染めないから環境を変えたい」など、現実逃避で転職する人も多いのが特徴です。この手のタイプは採用しても成長しなかったり、すぐに辞めてしまったりするケースが多いため、企業側も警戒しています。

転職を繰り返す「ジョブホッパー」になると書類審査で落とされる確率が高くなり、後々のキャリアにも悪影響をおよぼします。25歳までに転職歴が1回(次が2社目)ならまだ大丈夫ですが、2回で門戸はぐっと狭くなり、3回だとほぼアウトです。

社会人経験が2年以内ではキャリアといえるキャリアもそうはないでしょうから、面接では「何ができるか」「何をしたいか」と同じくらい「なぜ前職を辞めたのか」を根ほり葉ほり聞かれることになるでしょう。そこで相手が納得するような説明ができるかが、成否を左右する1つのカギになります。

できれば「人間関係」に2~3年は耐えてみる

会社の倒産や事業縮小による解雇など、外部要因が理由であれば「それは大変だったね」となるでしょう。配属先の仕事内容が合わず異動も適わないとか、入社してみたら当初の約束とまるで違ったというのも、納得されやすい理由です。また、まったく適性がないとわかったので路線変更したいというのも、早めに動きたい理由としては理解を得やすいと思います。

やっかいなのが「人間関係」を理由とした転職です。真の動機として最も多いはずでが、転職希望者としても説明のしようがありませんし、採用する側も確かめようがありません。とくに何度か転職している人だと「問題は職場ではなくこの人にあるのではないか!? ウチで採用しても些細なことですぐ辞めてしまうだろう」と思われてしまうのです。

ですからよほどのブラック企業でもない限り、最低でも2年間は同じ会社で頑張りたいところです。どんなに合わない職場でも2年間いたのなら何らかは得ているはずですし、少なくとも耐性はあることは証明できます。昔は「石の上にも3年」と言ったものですが、最近は2年でも大丈夫になっています。

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20代前半で転職するなら「すぐ辞めてしまう人」とは思われないよう気をつける

今や30歳は「壁」ではないので焦らずに

20代後半の転職者に需要がある理由

一方で20代後半の転職希望者は、即戦力として期待されます。とくに2009年からの数年間はリーマン・ショック(2008年9月)の影響で、多くの企業が採用を絞っていましたから、その時期に新卒だった現在の29~33歳は、転職市場で最も需要があるのです。

ただ、採用する側の期待が大きいだけに、ミスマッチも起こりやすくなっているのも事実です。20代半ばを過ぎると技術系では優秀なエンジニアになっていたり、営業ではトップセールスでバリバリ実績を上げている人もいます。

そういう人が転職すると、当然ながら給与も待遇も上がります。けれども何となく「中の下」あたりをウロウロしていた人だと、給与や待遇以外のところに価値を見出さなければ転職しても満足感は得られないかもしれません。

「転職カード」をいつ切るか

昔は30を超えると求人数が大きく減ったので「20代のうちに転職」しておくのが有利でしたが、現在30歳はそれほど大きなハードルではなくなっています。将来のキャリアとしても最も価値がある30代にどんな仕事をしたいのか、そこから逆算していま動くべきか/とどまるべきかを考えるべきです。

転職は人生においてそう何度もできるものではありません。安易な転職でキャリアを落とすくらいなら、いまの職場で頑張ったほうがいいケースはたくさんあります。苦境に直面すると転職を考える人が多いのですが、逃げずに歯を食いしばって乗り越えてから転職市場に名乗りを上げた方が、自分を高く売り込めるのではないでしょうか。

目の前の仕事に全力投球することが、いい転職への近道だったりもするのです。

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「今何をするか」より「30代に何をしたいか」から逆算して考える

エージェントのアドバイスを過信してはいけない

エージェントの立場で考えてみる

ところで、転職に際して多くの人が利用するであろう転職エージェントとの付き合い方も考えてみるべきです。

転職エージェントは転職希望者を紹介して入社が決まると、その人の年俸の30~35%を手数料として得るビジネスです。ということは「採用が決まりやすい企業」「年俸が高い企業」に紹介することに大きなインセンティブが働きます。

大手の転職エージェントは、求人数が多いものの、担当者によっては必ずしも転職希望者に親身に寄り添ってくれない場合もあります。逆に中小の転職エージェントは、求人数は少なく時間がかかりますが、親身になって探してくれるところもあります。どちらがいい、悪いではなく、両方(大手1社中小2社程度)に登録してみるのがおすすめです。

エージェントはあなたの代理人であると同時に、マッチングビジネスです。ただし、紹介された先が本当に自分に合うかどうか、最終的に見極めて決断するのは自分自身だということはお忘れなく。

サイトもエージェントも使わず転職できる

最近は、サイトもエージェントも介さない転職がトレンドになっています。その1つがリファラル採用。自社の社員に友人・知人を紹介してもらうやり方です。声をかける社員は自社に馴染めそうな人に声を掛けます。また誘われて入社した転職者も、友人・知人の手前あまり変な辞め方はしないだろうということで、採用が決まりやすいです。

また、企業が自社のHPで中途採用を募っているケースもあります。HP経由の応募は多くないものの、採用率は転職サイトやエージェント経由より高いそうです。それは、その会社のHPを隅々まで読んで応募してくる人ですから志望動機が強いと評価され、またエージェントへの紹介手数料もかからないため採用のハードルが少し下がるのです。行きたい企業がはっきりとある人には、おすすめです。

普段から大事にしたい「縁」

ベンチャー企業は「ミートアップ」と称した勉強会や交流会を盛んに開催していますが、これも広い意味では中途採用計画の一環です。「最新の知識や情報を得るため」「業界の横の繋がりを広げるため」という大義名分があれば気軽に来ることができる人も多く、接点を重ねながら少しずつ自社のファンにして、あわよくば優秀な人材をスカウトしようというのです。

いい企業に巡り会えるかどうかは、ほとんど「縁」で決まります。会社を辞めてから必死になって探すよりは、日頃から広くさまざまな人たちと交流して人脈と広げながら、今の職場で与えられた職務に全力であたってスキルを磨いておく。そうしていれば必ず「運命の出会い」がやってくるので、それを逃さず転職する。これがいちばん幸せになれるパターンだと思います。

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「網を張っておいて待つ」のも、いい会社と巡り合う方法の一つ

構成=渡辺一朗 撮影=山本祐之 編集=eon-net編集室