紙の領収書を捨てるための自署ルール、3日ルール、タイムスタンプ……5分でわかる! 電子帳簿保存法のポイント

袖山 喜久造(そでやま きくぞう)

SKJ総合税理士事務所所長

SKJ総合税理士事務所 所長 税理士。平成元年、国税局採用。約15年間にわたり、大企業の法人税調査事務に従事。平成21年から情報技術専門官として電子帳簿保存法担当となり、申請書類の審査や企業の申請相談に携わる。平成24年に退職し、税理士事務所を開業。現在、「適正な会計情報のディスクローズのための企業の電子化」に向けた税務・電子帳簿保存関連のコンサルティングを行っている。

多くの会社には、請求書や領収書など、法律で保存が義務付けられている膨大な書類を詰めた箱などが積まれたスペースがあるはずだ。税務調査でもなければ決して開くことはないであろう書類のために、オフィスの一角が死んでいて、その管理に手間がかかるとすれば、なんとももったいない話である。しかし実は、これらの書類は、電子帳簿保存法などに基づいたしかる手続きをとれば、捨てることが可能だ。運用面でも幾度かの法改定で保存ルールの要件が緩和され、電子化に踏み切りやすい状況が整いつつある。そこで今回は、保存書類の電子化に関するポイントを、元国税局の情報技術専門官で、現在はSKJ総合税理士事務所所長の袖山喜久造氏に聞いた。

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経費精算クラウド化の「3大メリット」とは経費精算クラウド化の「3大メリット」とは

メリット1  領収書や請求書の保管コストが必要なくなる

データ化のための法律は20年以上前からある

役所関係の文書は簡単にデータ化できない、と考えている人は多いのではないだろうか。
たとえば、法人は請求書や領収書などの重要書類を、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌年から7年間(平成30年4月1日以降に開始する欠損金の生じた事業年度においては10年間)保存しなければならないことになっており、帳簿書類は現在も紙による保存が原則ではある。
しかし実際には、法定保存文書をデータ化するための法整備は、着々と進んでいる。今から20年以上前の1998年に制定された「電子帳簿保存法」という法律で、国税関係の書類について、税務署長の承認を得たうえで電子化することが既に認めらている。
また、2005年に施行された「e-文書法」では、国税関係以外の文書を含む、広汎な法定保存文書について、文書のデータ保管方法が定められた。

「経費精算クラウドサービス」が法対応のコストを下げた

電子帳簿保存法に則って文書をデータ化するためには、システムの導入、社内規程の作成・周知、管轄税務署への申請など準備が必要なのは言うまでもない。帳簿はシステムで保存を開始する事業年度初日の3カ月前、書類は電子保存開始日の3カ月前が申請期限になる(帳簿については原則として課税期間の途中からは適用できない)。申請が認められると、承認以前の重要書類もスキャナ保存ができるようになる。つまり、電子化が済んだ過去の請求書や領収書の原本は処分できる。

一方で、多くの会社にとって電子化に躊躇する理由は、電子帳簿保存法への対応に必要なシステムの導入費用や、スキャナーなどの専用機器にかかるコストではないだろうか。しかし、最近ではクラウドを活用した経費精算クラウドサービスが普及したことで、電子化のためのシステム導入コストはかなり下がってきている。紙の文書を社内で物理的に移動し処理する手間や、データと紐づけて整理・管理するのに必要なコスト、保管するスペースのコストに比べると、電子帳簿保存法に対応した経費精算クラウドサービス導入に必要なコストのほうが安いと言えるレベルになっているのだ。

メリット2 消費税の複雑化に対応する

経費精算クラウドサービスにコスト的なメリットがあるとしても、導入時に必要な電子帳簿保存法への対応の手間などを考えると、今すぐ積極的に動きづらいという会社も多いかもしれない。しかし、見送りを決め込んでいると、近い将来、経理事務に大きな負担が生じることになるかもしれない。それは、軽減税率の導入により消費税の税率が複雑化したうえ、今後、いわゆる「インボイス制度」の導入が予定されているからだ。

「働き方改革で過度の残業をさせにくくなっている一方で、経理の業務は確実に増えています。たとえば消費税は2019年10月1日から軽減税率が導入され、会計処理に税率8%と10%の売上や支払いが混在するようになりました。業種によってはこれだけでも伝票入力が倍になるなど事務負担は相当増えていると思いますが、2023年10月からは消費税のインボイス制度が始まります。そうすると証憑(納品書、請求書、領収書など取引の証拠となる書面又はデータ)保存はより確実にしなければなりません。証憑に適格請求書発行事業者登録番号が記載されているか、その番号が間違いなく課税事業者のそれであるのかを確認しなければなりません。それらを紙ベースで一枚ずつ処理していくのは、現実的ではないでしょう」(袖山氏)

※インボイス制度(適格請求書等保存方式)とは

消費税の「仕入税額控除」の要件を厳格化する制度。この制度が始まると、課税事業者が発行する「適格請求書」(事業者登録番号の記載が義務づけられている)に基づく仕入れや支払いしか、消費税の「仕入税額控除」ができなくなり、対応しなければ消費税額の支払いが増えることになる。
「仕入税額控除」とは、事業者が顧客から受け取った消費税から、仕入先に支払った消費税を差し引いた額を納税する仕組みのこと。現在は売上高1000万円以下の免税事業者からの仕入れ分についても、仕入税額控除ができることとなっている。しかし、インボイス制度が始まると、免税事業者への支払いは仕入税額控除ができなくなる。仕入先によって仕入税額控除ができるものとそうでないものが混在することになり、分類・確認作業を含めて、会計処理の負担は増大することは確実だ。

メリット3 会社の空気を引き締める

「経費精算の乱れは社風の乱れ」

電子帳簿保存法に基づいて社内で紙の領収書を保管をやめる場合には、一定期間内に領収書をスキャンし、タイムスタンプ処理をする必要がある。その「期間」は、経費精算する社員が自分で領収書をデータ化するなら1週間弱、経理部など精算者以外の者がデータ化するなら約2カ月以内だ。つまり、経費精算クラウドサービス導入にあたっては、社内の経費精算ルールを見直す必要がある。

ルールの見直しには、社内からの反発や不満もあるだろう。しかし、このような新しいルールを守れない職場があるとしたら、その職場には、別の問題があるのかもしれない。国税庁時代に幾多の企業に税務調査に入った経験がある袖山氏は「経費処理を見ればその会社のコンプライアンス度がわかる」という。

「細かい経費精算の不正だけを調べるために、わざわざ国税当局が企業調査に入ることはあまりありません。経費の一件ずつはせいぜい数万円程度と額が小さいですし、裏取りも容易ではないからです。税務署が本当に調べたいのは業務処理の適否であり、契約や納品や検収などの方法、売上や仕入れの計上の方法なのです。ですが、私は国税庁職員だった当時、調査の最初の段階では徹底して業務処理の方法をよく聞いていました。特に経費精算の方法についてはその会社がどの程度経費の計上を慎重に検討しているかを測るのに有用でした。経費精算というのはどの会社でも行われている業務であり、あらゆる部署のすべての従業員が日常的にやっているのです。従業員から提出される経費精算についてどのくらいの頻度で経費精算をしているか、申請に対して社内でどういう審査や承認をしているかを見ると、その会社のコンプライアンス度がだいたいわかります。いい加減に経費精算をしている会社は、ほかの処理についても問題を抱えている会社が多いように感じます。」

「会社の空気を引き締める」効果

経費精算が日々厳格に行われ日付や用途の記載が細かく、経理が「領収書と申請書の日付が合っていない」「金額が違っている」「使途の説明が足りない」など何度も申請書を突き返して不明点をなくしている会社は、日頃から社内ルールの徹底がきちんとしており、本来業務においてもおかしなところが見つかることはほとんどないという。

「ところが、領収書があれば何でも経費に計上しているような会社は社内ルールがルーズでスキが多い。そこで本来業務を詳しく見ていくと、架空外注費があったり売上の計上時期をズラしていたり、いろいろと問題が出てくるのです。調査する側からすると間接業務、とくに経費精算を見るのは会社の体質を見極める上で非常に便利なプロセスでした。これは税務調査だけでなく監査でも同じです」

逆に言えば電子帳簿保存法に基づいて電子化へ取り組むと同時に、承認審査プロセスや社内規程をきちんと策定し、経費精算をルールに基づいてきちんと行う体制にできれば、会社の綱紀の緩みを引き締める良いきっかけとなり、業務の効率化という、本来の電子帳簿保存法の目的以上の効果が発揮されるということだ。

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電子帳簿保存法に基づく経費精算クラウド化には、領収書や請求書の保管コストが減る、消費税の複雑化に対応できる、会社の空気を引き締められる、という3つ大きなメリットがある

クラウド導入で、経費精算方法はどう変わるか?クラウド導入で、経費精算方法はどう変わるか?

領収書の7年間保存は不要になる

スマホ撮影で金額や日付を自動読み取り

経費精算を電子帳簿保存法に基づいてシステム化すると、次のような流れになる。まず、経費を立て替えた人は領収書を受け取ってすぐ、自分の名前を書き込んで(自署)スマホの専用アプリで撮影する。するとその画像はクラウドにアップされ、自動的に「タイムスタンプ」が付与される。「タイムスタンプ」とはデータに刻印される日時の記録で、そのデータが時刻以前に確実に存在していたことと、その時刻以降にデータが改竄されていないことを証明する。

スマホで撮影された領収書は、システムが金額と日付を自動で読み取る。申請者は、そこに使用目的などの情報を追加した上で精算申請のボタンを押す。すると申請者の上司に承認を求める通知が行き、上司が承認ボタンを押すと、今度は経理担当に承認を求める通知がいく。経理担当が承認したら経費が精算され、領収書の原本(紙)は、社内の定期サンプル検査後に廃棄が可能にななる。

経費振込みまでの日数が短縮

「電子帳簿保存法では保存データに関して、解像度200dpi以上やカラーによる読み取り、解像度や階調情報の保存、入力者情報の確認など真実性を確保するための幾つかの要件を求めています。しかし、これらはシステムが電子帳簿保存法に準拠した作りになっていれば、利用者が気にしなくても大丈夫です。会社によっては従業員に個人のスマホを使わせたくないというケースもありますが、その場合はタイムスタンプが付けられる複合機(e-文書法対応スキャナ)で電子保存する方法もあります。いずれにせよ従業員側は手順に従って領収書を画像に取り込めばいいだけです」

実際に経費精算システムを導入したところでは、従業員も含め評判は良いという。そもそも、ほとんどの人は経費精算を面倒な作業と思っている。一枚ずつ台紙に糊付けして申請書に記入して……という煩雑な作業が、スマホで撮るだけなるのだからすんなり受け入れやすいのだろう。しかも、承認された経費が振り込まれるまでの日数も短縮するのだから、いいことばかりだ。

データ化には「日数制限」がある

「概ね3営業日以内」とは何日以内か?

電子帳簿保存法へ対応する場合、唯一、社員が負担に感じるのは「入力までの期限」かもしれない。電子帳簿保存法では、領収書の電子データ化は受領してから特に速やかに入力という「3日ルール」があるからだ。

つい最近まで3日ルールは文字通り「3日以内」だったから、たとえば金曜日に領収書を受け取ると月曜日までには電子化しておかなければならなかった。月曜日が祝日や振替休日だと休暇中にやらなければならないということで、画像を撮るだけとはいえなかなか厳しいハードルだった。

「そういう声が多くあり、国税庁は2019年7月の通達でこのルールを”概ね3営業日以内”と改正しました。金曜日に領収書を受け取った場合は水曜日が期限になるので、かなり緩和されています。しかも、“概ね”ですから厳密ではありません。たとえば毎日営業でシフト勤務制(休日が従業員ごとにバラバラ)の会社もあるでしょう。そういう会社では3出勤日としたり、全従業員統一で4~6日以内としても許容されます」

「1週間」は「概ね3日以内」か、否か

なお、電子帳簿保存法の通達に「4~6日でも可」と書いてあるわけではないので、国税庁に「6日でいいですか」と問い合わせても「OKです」とは答えてもらえないだろう(4~6日というのはあくまで袖山氏の解釈)。要するに「社内で規則を定め、それに従ってきちんと運用してください」あるいは「定期的に検査を実施して、不正が発覚した場合に改善する体制を整えて下さい」ということだ。では、社内ルールで1週間以内と定めればそれもアリなのだろうか。

「それは認められないと思います。というのも、電子帳簿保存法では領収書の保存方法について”特に速やかに”電子化するよう書いてあります。保存に時間がかかるほど改竄を可能にする機会が増えるわけでこれを防止するためだが、他の条文で”速やかに”という表現が使われている箇所があって、その目安が7日になっているのです。速やかにが7日で、特に速やかにがそれよりかかっては整合性がつきません。ですから領収書を本人が電子データ化する場合は、どんなにかかっても6日が限度です」

「概ね3日」を過ぎてしまったらどうするか

では、何かの事情で「概ね3営業日」を逃してしまった場合は、諦めて自腹を切ることになるのだろうか!? 否、その場合もちゃんと救済策は用意されている。

「概ね3営業日という期限は申請者本人が自署した領収書等を電子データ化した書類の場合であって、本人以外(たとえば経理部)が原本を預かってスキャンや確認をする場合は、不正に対する牽制効果が図れているため”業務処理サイクル後速やかに入力する”と入力期限が緩くなっています。具体的には2カ月と概ね7営業日、つまり約67日後です」

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経費精算クラウドサービスが電子帳簿保存法に準拠して作られていれば、データ化の要件をあまり気にする必要はない。しかし、データ化の日数制限については、社員が意識して運用する必要がある。

経費精算クラウドサービス導入の注意点経費精算クラウドサービス導入の注意点

値段だけで選ぶのは危険

電子帳簿保存法などにより電磁的記録による保存が認められているものには、ほかに帳簿(仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、売上帳、売掛金元帳、仕入帳、買掛金元帳、固定資産台帳等)、決算関係書類(棚卸表、賃貸貸借表、損益計算書等)、その他書類(見積書、請求書、注文書、契約申込書、納品書、検収書、注文書、契約書等)がある。
本来なら、経費精算をデータ化・クラウド化するだけでなく、他の法定帳簿や書類もまとめてデータ化して保存するシステムを導入することも考えられる。

「これらのデータがすべて連携できると便利なのですが、1000万円以上の導入費用がかかります。中小企業ですとかけられる予算は50万~100万円程度のところが多いと思いますから、システムを連携しての一括管理は諦めて経費精算システムと会計システムをそれぞれに運用する(データの共有は可能)のが現状では現実的かもしれません。最近台頭しているクラウドサービスでしたら、月額3万円程度から利用できます」

ただし、安さが売りのクラウドサービスは従業員数に応じた料金設定なので、中小企業にとっては有利だが、大企業の場合は費用がかさむ可能性があることには注意が必要だ。タイムスタンプ機能が別料金になっているサービスもあるので、慎重に比較検討しよう。また、現在は価格競争で安値に設定されているが、ネットビジネスの定石として、顧客の囲い込みが終わり、シェア争いが落ち着いたら確実に値上げがあると見る専門家も少なくない。低価格のサービスがこれからも安いままかどうかはわからない。

「事業の継続性も気になるところです。クラウドサービスは、どこかにあるサーバーにデータを預けているわけです。それなりに値の張る国産のシステムにはデータ保証がありますが、それは国内の複数個所にサーバーを置いて常時バックアップを取るなどしてリスクに備えているからです。しかし、低価格のクラウドサービスですとデータの保証がない場合があります。電気代と維持管理との安い発展途上進国に汎用サーバーがあって、その空き容量を使っている会社があるとも聞いています。”データは格安でお預かりしますが保証はいたしかねます”というシステムの場合、自社でバックアップを取っておく必要があります」

経費精算からデータ化を始めるのが無難

簡単にやめられない「プリントアウト」と「入力」の連鎖

また、文書のデータ化を始めるといっても、紙で行う業務が残っている以上、どうしても紙とデータを連携させるプリントアウトやスキャンといった作業が必要になる。

「ご存知のように、現在政府は”働き方改革”として、業務のIT化・効率化を推進しようとしています。各種書類の電子化はその中の大きな柱です。日本は先進国の中でもIT化・電子化が遅れています。たとえば稟議書はパソコンで作るのに、社内で決済を取るにはそれをわざわざプリントアウトして紙で回します。請求書はパソコンで作成するのに相手方に届ける時にはやはり紙に出力し、封筒に入れて切手を貼って、郵便で送るのです。それを受け取った相手方はその請求書を見ながら金額を社内のパソコンに入力して処理し、支払いが完了するとこんどは支払通知書をパソコンで作成し、またまた紙に印字して……とやるわけです。こんな非効率はないでしょう」

業務の完全なデータ化には多額の費用を覚悟する

パソコンやタブレットで作成したデータは、紙を介さずデータのままやり取りする、あるいはクラウド上に置いて関係する人たちがリアルタイムに共有できるようになれば、業務の効率化は格段に進む。また、そうしたデータが在庫や顧客動向と機能的に結び付けられれば、売上増や顧客満足度の向上にも役立てられるはずだ。

「従来の紙の仕事の流れをそのまますべてデータに置き換えようとすると、専用のシステムを構築する必要があります。となるとオーダーメイドですから数千万円レベルの費用がかかる。中小企業だと相当の体力のあるところでないと、一気に取り入れるのは難しいでしょう。また、従業員が新しいやり方に慣れるまでの時間や、システムに不具合が生じた場合にどう対処するかも含めて、それなりの移行期間を要します。ゆえになかなか踏み切れないという会社が多いのです」

本来業務の電子化は後回しにする

とはいえ、世間の潮流が文書のデータ化に舵を切っているのもまた事実。一気に全部を変えるのは無理としても、できるところから手を付けるのが現実的だと言える。

「会社の業務には”本来業務”と”間接業務”があります。データ化をして目に見える効果が上がりやすいのは”本来業務”の方なのですが、会社によって本来業務の方法は異なるので、システム化にはどうしても多額の費用と時間がかかります。
ところが”間接業務”の方は業種業態を問わず、どこの会社でもだいたい同じ作業をやっているのです。たとえば経費精算では社員が一時的に立て替えて支払い、後日申請書に領収書を添付して、提出し会社に請求するという流れです。どこもだいたい同じということは、システムについても汎用品が使えます。導入コストもそれほど高くはありません」

電子帳簿保存法に基づく領収書など法定文書のデータ化は、その保存方法に関する要件が法律で詳しく定められていてるので、一見手間がかかるようにも見える。しかし、システムが電子帳簿保存法の求める要件をクリアしているかどうかは、要件を満たしたシステムに与えられる、スキャナ保存ソフトのJIIMA認証を取得しているかどうかを確認すればいいので、実はそれほど手間はかからない。なお、JIIMA認証がなくても電子帳簿法の基準を満たしている製品はあるが、そうしたシステムを導入する場合は、自社が責任を持って確認する必要がある。

「データ化」はこれからどこへ向かうのか

「タイムスタンプ」がいらなくなる日

現段階では多くの中小企業が導入しやすいということで経費精算システムが話題になっており、中でも「領収書をスマホで撮影するだけで経費精算が完了する」「わずらわしい領収書が早々に処分できる」ということが関心を集めているが、袖山氏は「政府が本腰を入れて取り組む電子化とは、紙の帳票をスキャンしてデータ化できるようにすることではありません」という。

「そもそも電子機器で作成したものを出力した紙をスキャンでデータにすること自体がナンセンスです。今どきはほとんどの紙が電子機器で作成されているわけですから、最初のデータ化はほぼできているわけです。領収書にしても支払いデータが紙で出力されていますが、電子決済であればそもそも必要な情報は支払先や電子決済業者にデータとしてあるのです。それをそのまま会社の経費精算システムに取り込んで処理できれば、経費を支払ったという事実を領収書で証明する必要すらなくなります。不正が介在する余地は格段に減りますし、あったとしても検索・検証が容易です。いま政府が取り組んでいるのはそのためのルールと枠組み作り、データの連携活用による成長戦略の策定なのです」

紙ベースであるものを電子データに変換するから「電子化」なのであって、最初からデータとして生み出された情報がデータとして処理され、連携活用されるようになれば、もはや「電子化」という言葉は死語になるかもしれない。そしてその日は、確実に近づいている。社内文書のデータ化にあたっては、そういった将来像も頭の片隅におきつつ、現実的な電子化の方策を探っていく必要があるだろう。

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現在はペーパレス化の過渡期であるということを意識しながら、経費精算などの間接業務からクラウド化を進めるのが無難。

構成=渡辺一朗 イラスト=タケウマ 編集=eon-net編集室